MICE施設の3Dバーチャルツアー:課題と解決策

コンベンションセンターのバーチャルツアー

近年、会議場や展示場などの「MICE施設」において、3Dバーチャルツアーの導入が進んでいます。施設の魅力を世界中の利用者に分かりやすく伝え、施設情報を提供するのに効果的であると注目されています。

しかし、広大なMICE施設の3Dバーチャルツアーを作成するにあたり、いくつかの課題が出てきます。この記事は、当社がコンベンションセンターや大規模な宴会場の3D撮影にあたり、実際に直面した課題とその解決策をご紹介します。

課題1:スキャン範囲の決定と作業日数の予測

大規模な施設では、スキャン範囲を正確に決定し、必要な作業日数を予測することの難易度が高くなります。見積もりの段階で、正確な情報に基づいた計画を立てることが重要です。撮影は基本的にイベント開催がない日に行われますが、撮影業者の時間の見積りの精度が問われると言えるでしょう。

解決策: 総床面積を基に、各ホールに付随するスペースを予測。各ホールと付随する廊下などのスペースあたりの作業日数を算出することで、より正確な作業日数の予測が可能となります。

課題2:複数技術者によるスキャン作業の効率化

大規模な施設では、複数人でスキャン作業を行う必要があります。その際、作業の効率化とスキャンデータを結合するコストが課題となります。

解決策: カメラ内にデータを保存するLeica BLK G1とiPad Proを使用することで、現場で2人以上の技術者が同時にスキャン作業を行っても、データを効率的に結合することができます。事後にソフト提供会社に結合を依頼する必要もなく、コストも削減できます。

課題3:広大なオープンスペースでのスキャンにおける位置合わせエラー

Matterport製のカメラは写真解像度に優れていますが、広大なオープンスペースでのスキャンにおいて位置合わせエラーが頻発するという課題がありました。この現象はMatterport製「Pro2」でも「Pro3」でも確認しています。

解決策: 位置合わせ精度の高いLeica BLK G1を補完的に使用することで、この問題を解決しました。Matterport製のカメラとLeica BLK G1を併用することで、高画質と高精度な位置合わせを両立させることができます。

課題4:イベント開催によるスキャンの中断と状況変化

MICE施設では、イベント開催によるスキャンの中断や、スキャン再開時の施設の状況変化への対応が求められます。

解決策: スキャンデータ自体を参考に、以前の椅子の並べ方などを確認し、連続性を確保することで、イベント開催による影響を最小限に抑えることができます。

課題5:「スクール」や「シアター」などのレイアウト変更への対応

MICE施設では、イベントや会議の目的に合わせて、スクール形式やシアター形式などのレイアウト変更が可能です。これを一つのバーチャルツアーで利用者に見せることが必要です。

解決策: 一眼やミラーレスカメラで360度写真を撮影し、Matterportの3D表示を補完する「MPEmbed」の機能で表示することで、様々なレイアウトに対応したバーチャルツアーを作成することができます。

課題6:編集箇所に関するクライアントとのコミュニケーション

大規模な施設では、編集箇所を伝える際のコミュニケーションが課題となります。「どこどこの壁に汚れがありますので、ぼかしを入れてください」など、メールでは伝えにくいのです。

解決策: クライアントにバーチャルツアーの座標指定方法を伝えることで、問題の位置にダイレクトに飛ぶURLを発行することができます。この指定方法で編集箇所が明確に伝えられるようになります。座標指定のURLを活用することで、その他のコミュニケーションも円滑になります。