完璧な「手仕事」を求めて、私の奮闘記
そんなスイーツ事業で実績を積み上げつつある和田氏が、明段舎に持ちかけてくれたのが、今回の和菓子をスキャンする仕事でした。美しい座布団型のモンブランをシリコンモールドを制作するという実績を作っていたPRODUCT 158が、次に求めたのは、職人の手で作り上げたような「手仕事感」をデジタルで再現することでした。
CADでデザインされた和菓子はどこか淡白な印象を受け、一つひとつ異なる繊細な表情が失われてしまいます。和菓子職人は手作業で上生菓子を作る際、無意識にバランスを見ながら作りこんでいきます。そこで私は、本物の手作りの和菓子を3Dスキャンでデータ化し、その「バランスのとれた不完全さ」をそのまま型に落とし込むことを提案しました。「任せてください!手仕事による繊細さ、レーザースキャンでそのままデータにしますから!」と、自信満々に伝えました。
しかし、この仕事は想像以上に困難を極めました。対象の和菓子は、繊細な花びらのような模様が特徴の、美しい上生菓子でした。その美しさとは裏腹に、驚くほど柔らかかったのです。和菓子全体をスキャンするためにひっくり返そうとすると、花びらの模様が潰れてしまったり、欠けてしまったりします。さらに、私の高性能3Dスキャナー「Revopoint Miraco Pro」は0.2mmまで解像できる高精度を誇りますが、細かすぎるデザインを複数のスキャンでつなぎ合わせるには、マーカーを打つ必要があります。しかし、和菓子は柔らかすぎてマーカーを打つこともできませんでした。
悪戦苦闘の末、最終的な解決策として思いついたのは、和菓子屋さんに、本物の和菓子よりも少し大きめのモデルを実際の餡子(あんこ)で作っていただき、それを乾燥させて 硬くしてもらう、というものです。お客様である和菓子屋さんの協力のもと、作っていただくことができました。この方法で、ようやく和菓子のデジタルツインを完成させることができました。