3Dプリントによる和菓子制作

3Dプリントによる和菓子制作

a wagashi made from a 3D printed mold

職人の技を未来へつなぐDX

デジタルと伝統の融合:和菓子職人の働き方を変える3Dスキャン

こんにちは。明段舎株式会社のブラウンです。

次世代の空間映像で人々の生活を豊かにする」をコンセプトに、ウェブとリアルの垣根のない未来を目指し、デジタルと現実空間をつなげることに取り組んでいます。

これまで、大規模施設のデジタルツイン化やARコンテンツの制作など、さまざまな空間映像を手がけてきました。今回ご紹介するのは、これまでとは少し毛色の違う、新しい挑戦です。工業製品のプロトタイプ制作で知られる株式会社PRODUCT 158(イチゴウハチ)の代表 和田圭亮氏と協力し、伝統的な和菓子の世界にデジタル技術を応用するというプロジェクトです。

明段舎が現実世界や現実世界に実存する物体をデジタル3Dデータとして正確にキャプチャー(記録・保存)する技術に強みを持つ一方、和田氏のPRODUCT 158はデジタルデータを媒体に現実の「モノ」を創り出す技術に長けています。同じ三次元の世界を扱いながら、真逆の役割を強みとする明段舎とPRODUCT 158。両社が協業し、和菓子の新しい可能性を探る旅が始まりました。

工業製品のプロがスイーツ業界へ

 

PRODUCT 158の和田氏は長年、工業製品のプロトタイプやデザイン開発を専門とされてきました。しかし、工業製品の業界では3Dデータ活用が当たり前になり、顧客を驚かせることが難しくなっているという危機感を感じていたそうです。そこで、彼は3Dデータを活かせる「別の業界」を模索し始めました。

CG映像やVRアバターの制作、CGデータ販売など、様々な分野に挑戦しては撤退を繰り返す中で、あるパティシエとの出会いが彼の運命を変えました。そのパティシエは、海外での事例を知り、3Dプリンターを使って和菓子制作の新たな道を切り開きたいと考えていました。この出会いが、工業製品のプロであった和田氏をスイーツの世界へと導くきっかけとなったのです。

和田氏は、単に和菓子のデザインを提案するのではありません。「驚きを与えるデザイン」にこだわっています。パティシエの発想にはないユニークなデザインを3Dで形にし、「どうやって作ったの?」と顧客に思わせることで、商品の付加価値を高めるのです。この付加価値の提供は、今もなお、スイーツ事業で着実に実績を積み上げる土台となっています。

完璧な「手仕事」を求めて、私の奮闘記

そんなスイーツ事業で実績を積み上げつつある和田氏が、明段舎に持ちかけてくれたのが、今回の和菓子をスキャンする仕事でした。美しい座布団型のモンブランをシリコンモールドを制作するという実績を作っていたPRODUCT 158が、次に求めたのは、職人の手で作り上げたような「手仕事感」をデジタルで再現することでした。

CADでデザインされた和菓子はどこか淡白な印象を受け、一つひとつ異なる繊細な表情が失われてしまいます。和菓子職人は手作業で上生菓子を作る際、無意識にバランスを見ながら作りこんでいきます。そこで私は、本物の手作りの和菓子を3Dスキャンでデータ化し、その「バランスのとれた不完全さ」をそのまま型に落とし込むことを提案しました。「任せてください!手仕事による繊細さ、レーザースキャンでそのままデータにしますから!」と、自信満々に伝えました。

しかし、この仕事は想像以上に困難を極めました。対象の和菓子は、繊細な花びらのような模様が特徴の、美しい上生菓子でした。その美しさとは裏腹に、驚くほど柔らかかったのです。和菓子全体をスキャンするためにひっくり返そうとすると、花びらの模様が潰れてしまったり、欠けてしまったりします。さらに、私の高性能3Dスキャナー「Revopoint Miraco Pro」は0.2mmまで解像できる高精度を誇りますが、細かすぎるデザインを複数のスキャンでつなぎ合わせるには、マーカーを打つ必要があります。しかし、和菓子は柔らかすぎてマーカーを打つこともできませんでした。

悪戦苦闘の末、最終的な解決策として思いついたのは、和菓子屋さんに、本物の和菓子よりも少し大きめのモデルを実際の餡子(あんこ)で作っていただき、それを乾燥させて 硬くしてもらう、というものです。お客様である和菓子屋さんの協力のもと、作っていただくことができました。この方法で、ようやく和菓子のデジタルツインを完成させることができました。

the Miraco Pro laser scanner

職人の技を未来へつなぐDX

 

今回、プロダクト158の和田氏との協業を通して、明段舎の提供する3Dスキャンサービスが、和菓子職人の皆さんの働き方を根本から変える可能性を実感しました。

手作業でしか作れなかった複雑な形の和菓子を、シリコンモールドで量産できるようになることで、製造コストを大幅に削減し、時間を短縮できます。新たに生み出された時間で、新しい和菓子の開発に集中したり、顧客対応や営業活動に時間をかけたりと、事業拡大を図ることもできます。

和菓子職人の手仕事の良さをそのままデータ化し、量産という形でその技を多くの人に届ける。これはまさに、日本の伝統文化をデジタルで支援する「職人技のDX」です。明段舎とPRODUCT 158はこれからも、職人の皆さんの想いや技術を未来へつなぐお手伝いができることに大きな喜びを感じています。

Year

2026