バーチャル牛舎

バーチャル牛舎

バーチャル牛舎

こんにちは。明段舎株式会社ブラウンです。

「次世代の空間映像で人々の生活を豊かにする」をコンセプトに、Webとリアルの垣根のない未来を目指し、デジタルと現実空間をつなげることに取り組んでいます。

全国で350件以上のバーチャルツアー制作実績を持つ弊社では、Matterport Pro2Matterport Pro3Leica BLK 360 G1といった最新機材とドローン(DJI Mavic 2 Proなど)を駆使し、高精度な3Dデータやデジタルツインを制作しています。

今回は、牧場の日常を堪能できるVRコンテンツ「バーチャル牛舎」を制作しました。

 

cows inline at a japanese cattle barn
牛が撮影に興味津々(しんしん)でした。

バーチャル牛舎

「バーチャル牛舎」は、2022年10月に鹿児島県で開催された全国和牛能力共進会、通称「和牛オリンピック」のために制作されました。このVRコンテンツを通じて、来場者の皆さんに、まるで本物の牛舎にいるような臨場感を味わっていただきたいと考えました。また、光栄なことに、Captur3D(3Dプラットフォーム)とMatterport(デジタルツイン作成ソフトウェアプラットフォーム)が主催する「Digital Twin Awards 2022」にもノミネートされました。

 

The names of cows shown outside their enclosure
それぞれの牛は個性豊かな名前がついていました。

バーチャル牛舎への入り口

「バーチャル牛舎」の扉を開けると、そこは鹿児島県の小さな牛舎。まず、晩夏ののどかな田園風景と周囲の音、360度写真が皆さんを迎えます。目の前には4つの牛舎。どれか一つをクリックすると、ポップアップウィンドウでMatterportの空間が開きます。すると、換気扇の力強い音や、牛の装具が鉄製の柵にぶつかるカチャカチャという音が、はっきりと聞こえてくるでしょう。中には、農家の方々と牛たちの日常を記録した動画が流れています。

 

A bail of hay
タグごとに写真を分かりやすく入れました。

撮影地、霧島への道のり

「バーチャル牛舎」の舞台となったのは、鹿児島県霧島(きりしま)市の豊かな自然の中です。アクセスしやすい霧島を選んでくださったのだと思います。鹿児島空港が近くアクセスの良好な場所です。ただ、機材のバッテリーの心配があったため、前日に新幹線で移動しました。公共交通機関を乗り継ぎ、鹿児島空港ホテルに到着するまで、約6時間の道のりでした。

撮影は2022年の9月上旬に行いました。暑く湿度も高い霧島の竹林からは、セミの鳴き声が絶え間なく聞こえてきました。

現地では、電通ライブ関西支社の方々と共に、農家の方とそのご家族にお会いしました。農家の方々が牛について話す様子や、健康状態を確認するために牛に触れるその優しい眼差しから、牛への愛情が伝わってきて、温かい気持ちになりました。100頭以上はいたであろう牛たち一頭一頭に名前が付けられ、柵の上に書かれていました。農家のお母さんと娘さんは、離乳したばかりの子牛たちに餌をあげる際に、一頭一頭の名前を呼んでいました。

私たちは、子牛へのミルクやりや、農家の息子さんたちが成牛に餌(えさ)をあげる様子、獣医さんが妊娠中の牛を診察する様子などを動画に収めることができました。さらに、特別なおまけとして、子牛たちが私の持っていたRICOH THETA Z1という360度カメラに近づいてきて舐め倒すという、VRで見ると本当にドキドキする360度動画もあります!

 

a camera on a very high tripod
ドローンの音で牛が怖がるため、3mの三脚を使って高い位置から牛舎を見渡せる写真を撮りました。

360度パノラマ

「バーチャル牛舎」の大部分は、SONY(ソニー)のα7R IVというミラーレスカメラに、Samyang(サムヤン)の14mm魚眼レンズを装着して撮影しました。これらの写真は360度写真に変換され、Matterport Captureのアプリ内で、4つの牛舎の元となるMatterport Pro2のスキャンデータに重ね合わせられました。こうすることで、写真はMatterportクラウドにアップロードされる前に編集できます。牛の動きが速すぎてPro2のシャッター速度ではほとんど捉えきれませんでした。ミラーレスカメラで撮影した360度写真は、9枚の露出を変えた写真を連写し、HDR編集することで、暗い牛舎の中でも黒い牛を見やすくしました。壁のない牛舎には強い日差しが差し込むため、このHDR編集は不可欠でした。ソニーα7R IVの大きなフルフレームセンサーは、暗い場所でもノイズが少ないため、360度カメラでは難しい状況でも、牛舎と牛をきれいに撮影することができました。

撮影は決して簡単ではありませんでした。ミラーレスカメラのHDRを使っても、牛の動きは速すぎました。9枚連写した写真のうち、最も動きの少ない3枚だけを使用しました。また、車のタイヤや人の靴から病気が牛に持ち込まれるのを防ぐため、農場の入り口には白い消毒用の粉が撒かれていました。この粉はカメラの大敵で、カメラバッグに入り込んだり、レンズ交換の際に空気中に舞ったりします。ブロワーを頻繁に使用して、カメラとレンズをきれいに保つように心がけました。

a dog sleeps at sunset
バーチャルツアー中に二匹の犬がよく登場します。

動画制作

動画は、同じカメラに20mmの単焦点レンズとジンバル(手ブレ補正装置)、そしてiPhoneとジンバル、前述のRICOH THETA Z1を使って撮影しました。ほとんどの動画は、私が撮影し明段舎で制作しました(牛の出産シーンのみ、農家の方のスマートフォンで撮影されたものです)。動画編集はKevin Doyle Jr.が担当しました。

「バーチャル牛舎」の制作を決意してくださった鹿児島県と全国和牛能力共進会(和牛オリンピック)、そしてこの制作に明段舎を選んでくださった電通ライブ関西支社に心から感謝いたします。そして、「Digital Twin Awards 2022」に「バーチャル牛舎」をノミネートしてくださった審査員の皆さんにも、改めて感謝申し上げます。

終わりに

ここまで読んでいただきありがとうございました。下記はおまけですが、バーチャルツアー本番には入っていない360度動画です。リコーシータZ1で子牛たちの牛舎の動画を撮りました。思いがけない終末になりますが、お愉しみください。

関連リンク

明段舎のバーチャルツアー作成についてご興味を持たれた方は「プロフェショナル・バーチャルツアー制作」ページをご覧ください。

a Ricoh Theta Z1 360 camera with a lot of dirt on it.